たとえば今までの髪型が急に似合わなくなったり、お気に入りだった服が急に嫌いになる日が、きっと誰にもやってくる。もちろん誰もが、年齢のせいと分かっている。分かってはいるけれど、具体的に何がどういけないのかまではたぶんあまり考えないのだろう。単にもう歳だからと簡単に片付けている人が、少なくないのではないか。
今、知っておいてほしいのは、直接的な原因が"下向き"にあること。肌も顔立ちそのものも、次第に下を向いてくる。これはすべての人に同じようにやってくる宿命的な変化……だからこそ、この"下向き"に対して何をしたか、何をしなかったかで、若さ美しさが決まってくるのだ。
言いかえれば、衰え=下向き、そこに気づかないと、あらゆるアンチエイジングは効果がない。目尻や口角が下向きになるのはもちろん、肌のキメや毛穴までが下向きになり、それだけで、顔立ちの印象ははっきり変わる。下向きの"見えない矢印"が、頭の上にぼんやりでも描かれてしまうのだ。
だからたとえば髪型は、トップにボリュームをもたせること。トップに高さがないと顔立ちは余計に下向きに見えてしまう。まずは髪の立ち上がりをふっくらさせ、次第にトップが高めの髪型に変えていくべき。
そして今まで似合っていた服が似合わなくなるのも、襟元や全体のシルエットが、顔の下向きベクトルを強調してしまうから。たとえばオーバーサイズのルーズなニットのような、下向きのベクトルがきいている服は、当然のこととしてたるみを強調してしまうから避けるべきなのだ。
とても不思議だけれど、どんな服にも矢印があって、だから、靴も含めた全体のコーディネートは、下に重心がある装いと、上に重心がある装いにはっきり分かれてくる。言うまでもなく、重心が下の方にある装いはそれだけで老けて見えるわけで、服選びの時は、その矢印を決して見逃さないこと。
もちろんメイクにおいても、アイラインを目尻で撥ね上げる、眉山を少し高めに描く、チークも頬の中心からこめかみに向けて上向きに描く……などなどの方法で、顔の上に上向きのベクトルを作るような計算をしてほしい。
ちなみに、サングラスをカチューシャ代わりに頭にかけて、高さを出すみたいなこともまた、上向きベクトルを作る工夫のひとつとなるのを覚えていてほしい。
でも何よりも重要なのは、表情の向きかもしれない。口角がいつも少し上を向いていること。そしてなんとなくだが、頬も上を向いていること。そして目も意識して上向きを心がけると、いつもぱっちりした輝く瞳は、不思議なことにそれだけで、全体の表情まで明るくする。人を上向きの印象にする絶対の鍵なのだ。
でもそのためには、心をいつも上向きに。斜め上45度に向かって生きていくような気持ちが、あなたの印象を365日、上向きにすること、覚えておいて。それは究極のアンチエイジングであることも。
齋藤薫
Kaoru Saito
女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。新著『大人の女よ!もっと攻めなさい』(集英社インターナショナル)他、『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。