年齢印象を決めるのは、肌だけではない。髪型、髪質、服装、体型に姿勢まで、目に見えるものが全て年齢印象を決めているのは言うまでもないけれど、実は極めて大きな決め手となっているのが、声……。
例えば、初対面で60代に見えた人がいたとして、でも実際はまだ50代にもなっていなかったりするような時。よく見ると肌もピンとしているし、装いもトレンドを取り入れていて、ちゃんと若々しい。10歳以上も老けて見える原因はどこにあったのか? それが100%、声だと言ったら信じるだろうか。でも実際、声は良くも悪くもそういうふうに、人の印象を大きく大きく左右するのだ。耳から入る情報が、目から入る情報を負かしてしまうなんてちょっと信じがたいけれど、でも本当。声の印象年齢は、肌の印象年齢をも超えてしまうほど強烈なものなのだ。
想像はつくだろうけれど、人を最も老けて見せるのは、低くてしゃがれた声。声も立派に老化し、若い頃は高めの澄んだ声をしていたのに、歳を重ねるにつれ、男のような低くてかすれた声になってしまうケースは決して少なくないのだ。そしてその時、人は平気で10歳も老けて見えてしまう。
逆に歳を重ねても、澄み切った美しい声を持っている人は、それだけで年齢よりはるかに若く、溌剌として見える訳だが、ここが不思議で、実は"声だけ歳をとらない人"もまた少なくない。老ける人は別人のような声になってしまうが、老けない人はずっと若い頃のままの声だったりする。極めて個人差が大きなカテゴリーなのだ。
だからこそ余計にスキンケアと同様、声もアンチエイジングするべきなのである。 肌をせっせとエイジングケアしても、それが無駄になってしまうから。声も肌と同様、乾けば枯れるし、乾いたまま酷使すれば、しわがれる。そして声帯を作っている筋肉も衰える。筋肉がたるむから、美しく高い声が出にくくなるのだ。さらに、日ごろから、声の出し方に気をつかっていないと、声帯はさらに衰える。誰からの電話か分からない家の電話に出る時は、声が1オクターブ高くなる人はきっと少なくないはず。誰もが少なからず広い声質を持っていて、誰だって美しい声を出そうと思えばいくらでも美しくなるのに、全く不用意に声を出してしまうから、声はどんどん荒れるのだ。鍛えない、動かさない体のように。だから意識して美しい声を出そうとすること。水分をたっぷりとって、喉を鍛えること。それが声のアンチエイジングの大切な決め手なのだ。
意識して美しい声を出す、その効果的なトレーニングになるのが、ズバリ、歌を歌うこと。もちろん歌は声帯を鍛えることにもなる。声帯は、靭帯と筋肉。鍛えれば鍛えるほど強くなるのはわかるはず。
若く見える人は、声にハリがある。ハリと潤いがあるから艶やかな声も出る。声は、音になった生命エネルギー。若さの仕上げは美しい声で…、そう覚えていて欲しい。
齋藤薫
Kaoru Saito
女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。新著『大人の女よ!もっと攻めなさい』(集英社インターナショナル)他、『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。