一生で1番輝く時……あなたならどんな瞬間をイメージするだろう。実は多くの人が、“ウェディングドレスを着る日”を上げる。確かにその日は、時代を問わず“生涯で1番美しい日”とされてきた。言うまでもなく、幸せの絶頂にある日だから。そしてウェディングドレスという、見事に人を輝かせる奇跡の装いに身を包む日だから。
少女の頃の、お嫁さんになりたいと言う無邪気な願望は、要はウェディングドレスを身に纏うことへの激しい憧れだった。本能的に、それが自分を最も輝かせる服であることを知っているのだ。実際に純白の羽衣は、まるで四方八方から完璧な照明を当てられたように、神々しいまでに人を輝かせる。いや照明ではなく、自らが発光しているように光を放つ。だから脱ぐことを拒みたくなるほどの陶酔とともに、自分自身が輝くとはどういうことかを体感するのだろう。そして、いつかそれ以上に輝けますようにと、心に誓うのだ。
逆にウェディングドレスを着たことがない人も、また着ることを望まなかった人も、自分自身が光を放つ純白の発光感というものを、イメージの中で育てあげている。知らず知らず、自分が輝く日を目指して生きているのだ。私たちがスキンケアにおける「ブライトニング」という概念に、あるいは美白以上に心惹かれたりするのも、自ら光を放ちたいと言うイメージの衝動があるからなのだろう。
そしてやがて、一人一人にその日がやってくる。自分が1番輝く時は、日々を生きて行かなければわからない。40代になって、ウェディングドレスを着たあの日より、今の方が輝いていると思う人もいるはずだし、50代になって、自分がずっとイメージしてきたその輝きとはこれなのだと気づく人もいるのだろう。そんなふうに、自分が光を放つ日は思いがけなく年齢を重ねたときにこそやってくるものなのかもしれない。
なぜなら、人間の輝きは経験や知性によって磨かれるから。スキルが磨かれたり、人格が磨かれたり、1つ上の存在になれた時、きっと想像を超えるくらいに力強い光で、人は輝きだすのだ。ウェディングドレスの力など借りなくても。
もちろんその時、進化した化粧品のフライトニングがその光を何倍にもアップグレードしてくれるかもしれない。でも、自分はもうトシだからと諦めていたら、その日はやってこない。ちなみに私自身は40代の頃よりも、更年期を過ぎてからの方が、むしろ肌の輝きが増したと感じている。まさかと思ったけれど、逆にホルモンバランスが40代の頃よりも低レベルながら安定しているからトラブルが起きず、内側からじっくりと肌の構造を整えていくことができたから、シワはできても輝きは増したのかもしれない。ブライトニングとはそういうもの。年齢を問わず人を輝かせる力なのだ。
そんなふうに自分が生涯で1番輝く姿は極端な話、死ぬまでわからない。今日より明日、去年より今年、そんなふうに、以前よりもっと輝く自分を目指して生きて欲しい。
齋藤薫
Kaoru Saito
女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。新著『大人の女よ!もっと攻めなさい』(集英社インターナショナル)他、『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。
読んだ人から〝ずっと美しい人〟になる20のレッスン。
読むエイジングケア「大人の女よ! 清潔感を纏いなさい」(集英社文庫)