心も美しく

無駄と美の関係

美の本質は感動

No.5

2023.06.01 UPDATE

本当の美とは何か。 美の本質を伝える人気連載コラム。

現代においては、世の中のあらゆることが、合理主義に基づいて判断されがちになっています。合理主義を突き詰めていくと、すべてを数値化することにつながっていくわけですが、そうすると、たとえば子供の良し悪しを、偏差値という数字で計る。大人になったら、どれだけお金が稼げるか、お金という数値に置き換えて計る。そうやって数値で計れる物質的な豊かさばかりを追求してきた今、その合理主義に限界が見え始めているんじゃないかと思います。だから物に代わる価値観を、もう一度見直す必要があるんじゃないかと。

話は少しそれますが、人間が心地よくリラックスしている時に出るというα波、これは規則正しいものに触れても出ないんですよ。 1/fゆらぎというね、たとえば風が吹いて葉っぱが擦れ合う音、あるいは川のせせらぎ……そういったものからは、非常にα波が出るんですが。人間は、不規則なものに安らぎを覚える。つまり心のエネルギーとなる感動は、合理主義の中からは非常に生まれにくいんです。健全だといわれているように、毎日の生活が、すべて何時に何をして……と規則正しくなったら、そこに感動はなくなります。人間の心は、合理主義では動かせない。むしろ不合理とか、不規則性の中に感動の本質があるんですね。

それに合理主義では、無駄を省くじゃないですか。でも、実はその無駄こそが、人間にとっては重要。たとえば趣味という無駄があるために、救われたりもします。服は雨風をしのげればいいわけで、ファッションだって無駄ですが、でも装飾性とか、そういう要素が人間にとって大事だということは、誰でも知っています。有益かどうかを合理主義、数字というものさしで計っている限り、わかりえないことがたくさんあります。ただ、大人になって合理主義が自分の中に浸透すればするほど、だんだん無駄に価値を見出さなくなる。だから、感動も薄れます。
つまり合理的なものからは、「美」もまた生まれにくいのです。

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