本当の美とは何か。 美の本質を伝える人気連載コラム。
前回お話ししましたように日本の美を特徴付ける概念として「わび、さび」ということがよく言われます。そしてそれは茶道を通して最も磨かれて来たと言っても良いでしょう。
ところで茶会を通してお茶を楽しむということはもともと(朝鮮半島を通してきたかどうかを別にして)中国から入ってきたといえるでしょうが、豪華な茶席を造り、きれいな円形と輝くような白さを放つ茶器を使用して行なわれるというような当初はそれを模倣する形で始まりました。
世界の東の端に位置した島国に住む日本人はどうも古来から、海外からの文化を受け入れることに極めて熱心であったようで、それはお茶についても同じであったといえるでしょう。ただこれもまた日本の大きな特徴で海外から色々なことを受け入れることに極めて熱心である反面それをそのままで受け入れるというのではなく必ずのように「日本流」ともいうべきものに造り替えて来たと言えるでしょう。
お茶についても同様で いわば「道の精神」とも云うべき何事も極めることが大好きな日本人は、やがてそれを茶道とし、豪華な茶席は質素な茶室に変わり、茶器はやがて土色や黒色その形状も必ずしも端正なものではなく、ときに歪んだものや傾いたものが好まれ、美しいとされたりするようになってきたのです。
ところで美しいという言葉や綺麗という言葉があまり使われなくなって久しいように思われる反面、巷では「かわいい」という言葉が氾濫しています。最近では特にフランスあたりを中心にして世界的に使われだしたりしています。それはどうも英語で言えばBeautifulでもなく、Prettyでも表現できない、ましてやCoolでもないということでもあるようです。
決して端正な顔立ちをしているわけではなく、頭が良いわけでもない。純粋無垢な心を持ち、けなげに一生懸命に生きていて 何か身近に感じる かわいいの代表の「キティーちゃん」。「かわいい」を高度にバージョンアップしたものの、内の一形態が「わび、さび」だと言えるのではないでしょうか?