内面から美しさが湧き出るような、そんな女性でありたい。
エルビューが考える美しさを体現し、
美しく年齢を重ねている方の生き方や考え方の中には、きっとその答えがあるはずです。
素敵なゲストをお招きし、あらゆる視点から“美”に繋がるヒントを探っていきます。
エルビュー創立10周年記念となる今回のお客様は、2009年「モナコオペラ歌舞伎」への協賛をご縁に、
市川團十郎丈ご夫妻でエルビューニュースにご登場いただいて以来、
日本文化支援企画では着物についてもお話を伺っている堀越希実子様と、日本舞踊家としてご活躍中の長女・市川ぼたん様。
温かな思い出とともに、着物や日本舞踊を通じた日本文化の素晴らしさについてお話いただきました。
Profile
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堀越希実子
Kimiko Horikoshi
12代目市川團十郎夫人で、11代目市川海老蔵、3代目市川ぼたんの母。東京生まれ。学習院大学仏文学科卒業後、1976年に当代團十郎(当時海老蔵)と結婚。江戸歌舞伎を代表する名門市川宗家を支える存在として多忙な日々を送る。2010年に市川海老蔵が小林麻央さんと結婚。現在は1男1女の祖母でもある。着物と触れ合う日常のなかで磨かれたセンスを活かして、成田屋由縁の着物ブランド「茶屋ごろも」のデザイン・監修を手がける。
市川ぼたん
Botan Ichikawa
本名・堀越智英子。2006年8月に日本舞踊市川流の三代目市川ぼたんを襲名。東京・国立劇場で行われた「市川流舞踊会」で襲名披露。父の十二世市川團十郎氏と共に『鏡獅子』『京人形』を踊る。
市川海老蔵特別公演『源氏物語』 2014年4月5日(土)〜4月21日(月) 京都南座歌舞伎、オペラ、能楽を融合させた意欲作に出演いたします。どうぞご期待下さい。
文化を受け継ぐこととは、
日本人の精神を伝えていくこと
冨宅:10周年を記念して対談をさせていただくにあたり、今日はぼたん様にもお越しいただいております。日本文化に囲まれた環境でお育ちになったお立場からも、今日は色々とお話伺っていきたいと思います。
冨宅:日本舞踊には、踊りだけでなく三味線や長唄、鼓、笛といった伝統芸能も凝縮されていますが、ぼたん様にとって、日本舞踊の魅力はどのようなところにありますでしょうか。
ぼたん:四季はもちろん、生活の中にあるちょっとした日本らしさが散りばめられているところでしょうか。父は生前よく『街で和物の音を耳にすることがなくなった』と嘆いておりましたが、自分の国の音楽なのに、いつの間にか敷居が高くなってしまったのでしょうか。私たちの世代から少しずつでも変えていかなくてはと実感しております。
冨宅:市川團十郎様と以前対談させていただきましたときも、シャッター通りに三味線の音を取り戻す活動をされていると伺いました。私も年に一度、国立劇場で催される今藤長十郎様の演奏会に参加いたしますが、社員たちを招待しますと、皆本当に感動してくれます。耳にする機会さえあればと思いますね。
ぼたん:本当にその通りですね。
冨宅:日本舞踊は繊細な感情表現もまた魅力のひとつかと思いますが、いかがでしょうか。
ぼたん:現代人の感情表現とはまたぜんぜん違いますので、その佇まいから、なにかを感じ取っていただければうれしいですね。ただ、舞台に立つ側の鍛錬も必要ですが、随所に込められた日本らしさをたくさん感じ取っていただくためには、ご覧になる方々もそこへ意識を向けていただく必要があるのかもしれません。
冨宅:指の動き、肩の動きなど動作もまたとても繊細なものがありますしね。
ぼたん:それがまた日本人らしさなのかなと思いますね。海外のバレエのような踊りとは少し違って、いくつになっても踊ることができますし、また年齢を重ねることで深みや味わいが増していく、それが日本人の感性だと思うのです。
冨宅:おっしゃる通りですね。手ぬぐいや扇子などの小道具にも深い意味合いがあるのでしょうか。
ぼたん:手ぬぐいは、女性なら揺らす動作で心情を表すこともあります。踊りの際の扇子は、もとをたどればお祈りのお神楽や、神主様が持つ榊の葉、さらに古くは笹の葉のようなものが始まりといわれています。傘になったりキセルになったり、いろいろなものに見立てて使われていますね。
冨宅:こうして伺っておりますと、また拝見するのが楽しみになりますね。日本文化の奥深さを改めて実感いたします。
希実子:主人の歌舞伎を海老蔵が受け継ぎ、ぼたんが踊りを継承していくように、代々へと受け継がれるものがある一方で、物に至ってはどうなるのだろうと心配になることもありますね。着物、帯ひとつとっても、素晴らしいものがたくさんあるにも関わらず、継承する人がいないという。——今に着物もなくなってしまうのではととても不安に思えて。
ぼたん:日本人の精神を伝えていくことが大切なのだと思います。日本人には日本人に合うスタイルというものがあって、それは伝統を継承することのなかにたくさん入っていると。私はたまたま日本舞踊をやっておりますが、着物でも、長唄でも、大切なことをきちんと残すということが大事ですよね。
冨宅:市川團十郎様との対談で『日本文化は八百万の神によって育くまれた文化であり、すべてのものに神が宿るというのは、いたわりを持ってものに接するという精神、相手を思いやる気持ちこれが大切な事。』と伺いました。こうした日本文化がもっと海外に広まれば、世界中が平和になるのにと、本当に思うのです。
希実子:みんなで力を合わせてやっていかないといけませんね。
美と健康の秘訣は
睦まじく温かな母娘の絆
冨宅:お2人とも大変美しくていらっしゃいますが、美容と健康のためにはどのようなことをなさっていますか。
希実子:毎朝の犬の散歩と、あとはヨガを週に2回ほどしております。独特の呼吸法ですが、やるのとやらないのとではぜんぜん違うんですね。できるだけ体を動かすようにと努めております。
ぼたん:——何もないですね(笑)。母のほうがお肌のお手入れも丁寧なくらい。
冨宅:日本舞踊のお稽古そのものがけっこうハードでいらっしゃいますものね。
ぼたん:そうですね。あちこちの筋肉を使いますので、日本舞踊をなさっている70代、80代の先輩の方々も足腰がしっかりなさっていて、皆さんとてもお元気です。そういう意味では、私も体はとても鍛えられているのかもしれません。美容面で唯一、していることといえば、エレクトーレのスキンケアくらいです。初めて使ってみたときは、トリートメントが10秒でいいということに驚きまして。今までも何かしようと思ってはいたんですが、どれも本当に続かなかったので。
冨宅:お忙しい方に限って、皆さん感動してくださるんです。
ぼたん:これなら続く!と思いました。冨宅さんは、どれくらいの頻度でお使いになっているんでしょうか。
冨宅:毎日です。朝、晩と。
ぼたん:朝晩!?
希実子:本当に面倒くさがりでなにもしない人なんです(笑)。
冨宅:私は、朝は洗顔せずトリートメントだけなのですが、それだけでもメイクののりが違って、メイク直しをしなくて済むのです。希美子さまはもう長くお使いいただいておりますし、お肌が艶々としていらっしゃいますが、食生活でも気をつけていらっしゃることがありますでしょうか。
希実子:いえ、飲んだり食べたり自由ですね。
ぼたん:とくに“飲んだり”ですね。私たちは。もう、好き勝手をしております(笑)。
希実子:ただ、朝はニンジンジュースを作って飲んでおりますね。でも、本当にそれだけ。それでも健康でおります。
冨宅:美しく年齢を重ねるということもエルビューのテーマのひとつなのですが、お2人におって美しい女性というのはどのような女性でしょうか。
ぼたん:奥ゆかしい感じの女性になれたら素敵だなと思います。
希実子:私も同じですね。心のきれいな女性。だんだん年齢を重ねますと、生活しているうちにその人そのものが表面に表れてきますでしょう。私もちゃんとこの人(ぼたん様)に厳しく言ってもらわないとね(笑)。
ぼたん:大丈夫。いつも厳しくしてますから(笑)。
桜は日本人の心
美しく柔らかな春の装い
冨宅:希実子様には2回に渡って着物の選び方や着こなしについて伺ってまいりましたが、最終回は春の装いについてお伺いしたいと思います。
希実子:春といえば、真っ先にイメージしますのが桜。2月の末から4月の頭くらいまでが季節ですが、季節を問わず人気の柄ですね。柔らか物にはもちろん、ちりめんに金糸、銀糸の刺繍で入っても素敵です。桜以外なら、4月は霞に流水、5月は牡丹などもいいですね。紬でも光沢感があって、クリームやブルー、ピンクなどの淡い色みであれば、春の装いとしてとても美しいと思います。
冨宅:徐々に暖かくなって、6月になると着物はのものに変わりますが、帯はどのように変わりますでしょうか。
希実子:近頃は早くから暑くなるので、塩瀬の帯を合わせたりしながら、6月1日から夏の帯に変えます。私はよく汗をかきますので、長襦袢も早くからに変えて、7月にはもう麻を着ております。
冨宅:季節感だけでなく、気温のことも考えて快適に着こなすことも大切ですね。本日の装いもとても素敵でいらっしゃいますが、コーディネートのポイントをお聞かせください。
希実子:この着物はとくに季節感がありませんので、真夏以外なら着られるものです。これに黒い帯を合わせれば冬の装いとしても着られます。今日は春がテーマですので、淡い色に鳳凰の刺繍の帯を合わせて、帯留も春っぽい色でまとめてみました。普段はあまりこのような色みは着ないのですが、やはり年齢とともに華やかな色も取り入れるようになってまいりますね(笑)。今日はぼたんも、自身でデザインした着物で参りました。
冨宅:華やかなお色がとてもよくお似合いでいらっしゃいますね。
ぼたん:どうしても水玉模様を刺繍していただきたくて、それに合う柄と色をご相談しながら作っていただきました。
希実子:舞踊家ですので、個性的な色や、思いがけない柄が似合うんです。私とは対照的で。
ぼたん:着物にあまりない色をあえて着ることで、若い方にも気にとめていただけたら、着物に対するイメージも変わるのではと意識してみました。
冨宅:ぼたんさんにとって着物はとても身近なものだと思いますが、着物を着る方が減っている今、どのようなことをお感じになりますか。
ぼたん:私の場合は、お稽古着の日も入れればほとんど毎日着物ですが、お芝居を観るなど目的を持たない限り、着る機会もなかなか増えないのではと思いますね。お食事をいただくだけで苦しくなってしまう方もいらっしゃいますし。
希実子:自分で自由に、ラクに着られるようになるといいですね。きつい着付けのイメージを取り去って、もっともっと着物を着ていただきたいものです。
冨宅:本日は楽しいお時間を、どうもありがとうございました。
エルビュー株式会社 代表取締役社長。
2004年エルビュー株式会社設立、ファッション、美容などの幅広い知識を生かし、美をトータルに追求している。日本の伝統文化にも造詣が深い。