女はなぜ買い物が好きなのか?なぜそれほど気持ちが上がるのか?あらためて考えてみた。言うまでもなくひとつには、自分がその品物の分だけ高みに上がったような気分になれるから。単純に、ブランドもののバッグを持つと、外出する時の足どりが変わるくらい。そのブランドステイタスが前向きになるエネルギーに変わったりするのを、女ならきっとみんな知っている。
つまり女の買い物は、そっくり生きるチカラに変わるのだ。だからそのままアンチエイジングになるのは言うまでもないが、でもその反面、間違った買い物をした時の心のダメージは大きく、ブランドものの衝動買いで後悔した時は、それこそ何歳分か年をとってしまいそうなストレスに襲われる。女にとって買い物の力は良くも悪くも強大なのである。
一方で、"買い物依存症"とされる人の買い物は、その店でいちばん高い物を買ったり、店の人がすすめるものを次々買ったり、でも買ったものを身につけないことも多いよう。買う行動自体に満足してしまうからなのだろう。買うのを決めた時、もっと言えばお金を払う時がいちばん快感なのだ。
確かに、買う時の喜びも小さなものではない。店の外までスタッフが見送ってくれる時の、少々照れるけれど嬉しい気持ちは、確かに買い物効果のひとつ。それに、友だちと一緒に買い物に行った時、その友だちが何かを買うと、それもまた嬉しい。やっぱり買い物自体が持っている"アガル効果"がシャワーのように降ってきて、一緒にいる人も気持ちよくしてくれるのだ。
しかし、そういう効果は長くは続かない。やっぱり本当の効果は、当然のことながら買った物それ自体にあるはず。それが長い時間続けば続くほど良い買い物で、美容効果も高いということになるが、だからこそキレイになった未来の自分、幸せな未来の自分を想像させるものがいちばん効果が高いのだ。
極端な話、今の自分には少しサイズがきつい服をあえて買う人もいるのは、それを着るために痩せたい気持ちを自ら鼓舞する目的があるのと同時に、近い将来それをキレイに着ている美しい自分を想像し続けるため。もちろん未来の自分を想像して、アガる効果が長時間続くからに他ならない。
とすれば、服よりも化粧品。メイクよりもスキンケアの方が、買い物効果は高いということになる。キレイになる自分を期待し続けられるから。つまり、買い物効果って、目に見える効果だけじゃなく、目に見えない部分で自分を引っ張り上げてくれる効果がどれだけあるかということで決まるのかもしれない。
たとえば、化粧品を通販で買って、荷物が来るまでの間に、どんどん膨らむ期待……それ自体も人をキレイにしてくれるということなのである。
齋藤薫
Kaoru Saito
女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。新著『大人の女よ!もっと攻めなさい』(集英社インターナショナル)他、『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。