いろんな意味で今、時代の大きな節目である。以前から2020年は価値観が180度変わる年であると言われてきて、それを証明するかのようにコロナ禍となり、現実に価値観は激変してしまった。200年ぶりに星の巡りが劇的に変わり「土の時代」から「風の時代」へと大きく切り替わる特別な年だったのだ。 日頃は西洋占星術に興味のない人も、さすがに無関心ではいられなくなったはずなのだ。
「土の時代」は、物質や地位、金銭的なものに価値を求めてきたのが、「風の時代」は目に見えないものがとても大切になってくる。物質より心、地位よりも人と人との関係が重要というふうに。だから外見よりも内面の美しさが大切という言い方にもなるのだろう。
でもこうした考え方は、既に「人間はこうあるべき」という普遍的な正解として、様々に提案されてきた。物より心、外見よりも内面……それは時代を超えて、人が美しくあることの本質だからなのだろう。従って「土の時代」からそれは様々な形で伝えられてきた。でもその本質に行き着くのは、そう簡単なことではなく、何のプロセスも経ずにそこに行き着ける人は稀だった。やはり物欲に溺れる一時期があるからこそ、心の大切さに気付かされるのだろうし、外見の美しさを手に入れてこそ、内面の美しさの大切さにまで到達できるのだろうから。つまり、それでいいのだと思う。
でも例えば、「永遠の妖精」として今も愛されるオードリー・ヘプバーンが、トップ女優として君臨したのは15年ほど。ハリウッドでの名声や地位に執着することなく、36歳でスイス・レマン湖のほとりに家を買い、家族と静かで穏やかな時間を過ごしている。そして40代からは慈善的な活動が多くなり、晩年にはユニセフ親善大使となっている。同年代のハリウッド女優には若さと美しさを諦められずに整形を繰り返す人もいたが、この人はシワを隠そうともしなかった。まさに本質を知っていた人なのだ。
「土の時代」にそういう境地にまで至れる人は少なかったはずだが、「風の時代」はまさに風のようにそこへ行き着くことが、ある種当たり前になってくるのかもしれない。幸い、「風の時代」の世の中には物が溢れていて、何の苦労もなく優れた物が手に入る。だから逆に、物質への有り難みよりも、精神的な充足に、自然に目が向くようになっていくのだろうし、美しくなることも今はもう難しくない時代、難なく美しくなれる手段や道具が私たちをいくらでも助けてくれる。だからとても自然に、内面の美しさを求める流れになっていくのだろう。美しいことはある意味もう当たり前、その次に進むこと、だからこそ目に見えない、香りのような気配の美しさまでを美容するのだという意識を持ちたい。そういう準備が整ったからこそ「風の時代」が来たのだと考えてもいいと思う。
例えば、"持つ"から、"知る"、"感じる"へ。という変化は、知らない土地に出かけていって、知って感じる時間を作ることが大切になると考えてもいいし、自分の家にこもるより、新しい人間関係を作って様々な人との関わりを知り、そして心を震わせる、それが大切だという意味なのかもしれない。
どちらにせよコロナが明けたら、自分自身が「風の時代」の風になるつもりで、新しい時代を生きてみてほしい。
齋藤薫
Kaoru Saito
女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。新著『大人の女よ!もっと攻めなさい』(集英社インターナショナル)他、『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。
5つの章に100話の美人になる法則をつめこんだ、素敵なレディになるための一冊。
「美人だけが知っている100の秘密」(角川春樹事務所)