「僕たちには夢中になれるものがあったので、朝が待ち遠しくて仕方がなかった。それが幸せというものさ」
これは、飛行機を発明したライト兄弟の言葉。何だか、この言葉を耳にしただけで、目の前が明るくなるほど。偉大な発明をした彼らのモチベーションのルーツは、まさにそこにあったのだと気付かされる。
実際この言葉を見つけたとき、ハッとさせられた。じつはもともと“朝が待ち遠しい”ことが、理屈を超えた幸せの証なのは何となくわかっていた。でもどうしたら朝が待ち遠しくなるの? 肝心のその方法が今ひとつわかっていなかったから。なるほど、何かに夢中になること。まさに寝ても覚めても、と言う何かを見つけた時にこそ、人は朝からワクワクするのだとここで気づかされたのだ。
事実、あるアーティストの追っかけをやっている友人は、いつも忙しそうだし、いつだって元気。そして明らかに幸せそうである。
心も体も暇な時がないからだ。およそ悩みもないように見える。あっても“夢中になれること”がそれを上回ってしまうから。
これまで提案されてきた「幸せになる方法」は無限にあるけれど、その多くはとても哲学的で、頭で考える幸せだった気がする。でも夢中になることがもたらす幸せはそうした理屈を超えている。不満も不安も不幸感も、あらゆるネガティブな感情が入り込むスキがない位に、心も体もそのことでいっぱいになるから幸せ。充実した生活を送る最大のコツだったりもする。もはや幸せになる最もリアルな方法に違いないのだ。
以前は、〇〇オタクという言い方自体、なんとなくネガティブなイメージを宿していたはず。ある意味、寂しそうな印象さえ漂っていた。それで心を埋めていると感じたから。でも違うのだ。ときめきで心が埋まっている、寂しさなど入り込む余地がない。それどころか、自分が大好きな人を支えなければという自負さえ生まれているから、心が強くなる。心が弱くなっている時代と言われるけれど、夢中になることで心が強くなることにも気づいてほしい。
だから今、世の中は〇〇オタクだらけ。韓流ドラマにK-Pop、歌舞伎に宝塚歌劇、グルメにヨガにスピリチュアル… 対象は様々でも、何かしら夢中になるものを持っている人が本当に増えてきた。それこそ周囲の人が先に何かにハマっていて、彼女がいつもあまりに元気で幸せそうなので、羨ましくなってと言うケースも少なくないよう。気持ちばかりか、生活にも、そして肌自体にもハリがあるような印象が、周囲を驚かし、動かすのだ。自分もやってみたら心地よかった、朝からワクワクし、しみじみと幸せを感じた……そんなふうに、夢中体験の素晴らしさでオタクの輪が広がっていったということ。
例えばお手入れに夢中になると、やっぱり確実にハリが増える。確実に肌が明るくなる。それでスキンケアの大切さを改めて思い知ったりするのも、当たり前に思えるけれど夢中の効果の1つ。迷いなく目的に向かうから、何かに夢中になることは、願いも叶える幸せへの近道…。子供から大人まで、年齢を超え、時代も超えた、幸せの絶対ルールである。
齋藤薫
Kaoru Saito
女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。新著『大人の女よ!もっと攻めなさい』(集英社インターナショナル)他、『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。
読んだ人から〝ずっと美しい人〟になる20のレッスン。
読むエイジングケア「大人の女よ! 清潔感を纏いなさい」(集英社文庫)