『エレクトーレジャーナル』冬号P.17の「旬の食材レシピ」に登場された料理家の井澤由美子さん。中医学や栄養学にも詳しく、気さくで明るいキャラクターで多方面で活躍中です。井澤さんが料理に目覚めたきっかけ、そして将来のビジョンまでお伺いしました。
生まれながらの食いしん坊。おいしいものに囲まれて育つ
井澤さんは東京の文京区に代々お住まいの家で育ちました。
「祖母が料理上手な人で。漬物をつけたり、かつおぶしを削ったり、庭には梅や柿、栗の木などもありました。物心ついたときから、周囲にはいつも食べ物のいい匂いがあふれていました。
料理が身近にある環境だったので、食に興味をもったのはごく自然な流れでしたね。料理を作って人に喜んでもらうのも好きだったし、医療系の仕事をしていた祖父のおかげもあり、医食同源の考え方も自然に身についたと思います」
人との出会いが今の仕事へ導いてくれた
料理好きが高じて、23歳で飲食店をスタート。それが現在の仕事へとつながっていきます。
「メニューはあったのですが、常連さんは見向きもせず、その日仕入れた材料を即興で作る料理を楽しまれていました。そして例えば、風邪気味と聞いたら生姜や適切なスパイスを加えるなど、体調に合わせた食材や料理法で個々に提供していた。私はそれが楽しかったし、オートクチュールメニューになるので、お客様にも喜ばれていたようです。そうこうしている内に、自身の勉強意欲も高まっていきました。
そんな折、知り合いのカメラマンさんが女性雑誌編集者の方を連れてランチを食べに来てくれたんです。何度かその方が通って下さり、ある日『マーサ・スチュワート・リビングの日本版の雑誌を立ち上げるから、手伝ってくれない?』と誘われたのが最初のきっかけですね。
私はもともとマーサ・スチュワートの大ファン。本場のマーサのレシピを実際に作ってみて、手に入らない食材の代替えや分量、オーブンの温度などを日本人に合わせて再構築するのが私の仕事でした。がむしゃらにやっていましたね、自分のお店、子育て、雑誌の仕事…と当時は自分の時間は朝の15分位で、寝る時間も3、4時間でした」
そんな井澤さんの仕事ぶりが人づてに広まり、ワインのカタログ、料理雑誌の表紙、「3分クッキング」出演の依頼など、新たな仕事が次々と舞い込むように。
「なんでも度胸で体当たりしながら、現場で育ててもらった感じです。そんな私でもマーサ本人に会ったときは緊張して、一緒に写真をとることもできませんでした(笑)。それくらい憧れで、私の心の師匠。西洋と東洋の違いはあるけれど、料理上手でモダンだった祖母の姿とどこか重なるのも、私がマーサを好きな理由かもしれません」
体も心も健やかになれるスペースを作りたい
忙しい日々の傍ら、時間を作っては国内外へ旅に出て、その土地が育んできたおいしいものや、郷土食、体によいものを訪ね歩くという井澤さん。
「いつか海や山のそばで、本屋さんと食堂を兼ねたスペースを作れたらなと思っています。健康に関する本や、美しい花木の図鑑、お茶、自然食、世界の治癒料理本などをズラッと置いて。日本全国のおいしいものや、伝統的に息づいている郷土食材もたくさん集めて、体が喜ぶ料理を提供したい。体が整えば心も整う。食養生で健やかな笑顔がいっぱい集まる場所になったら最高ですね」
井澤 由美子
Yumiko Izawa
身体を健やかに保つ発酵食や薬膳に詳しく、おいしくて美容や健康にもよいレシピを数々提案。身体をうるおす商品開発を多く手掛け、NHK「今日の料理」「あさイチ」などの料理番組にも出演、著書多数。
http://yumikoizawa138.jp/
IG:@yumiko_izawa