本当の美とは何か。 美の本質を伝える人気連載コラム。
最近、「美しい」という言葉が、きちんと使われることが少なくなってきているような気がします。人を語るにしても、日常では「美しい人」というより、「きれいな人」という表現のほうが、よほど多く使われていたりします。でも、たとえば「きれいな水」と「美しい水」。これを比較してみると、「きれい」と「美しい」には違いがあることが見えてきます。「きれいな水」と聞いてイメージするのは、おそらくばい菌が入っていないとか、透明度が高いといった、汚れていない水。それに対し「美しい水」となると、「山奥にひっそりとたたずむ湖にたたえられた水」というようにイメージするのではないでしょうか。つまりきれいというのは、形が整っているといった表面的なレベルの表現だけれど、「美しい」は違う。その原点には、「感動」があるわけです。
人間は「心」と「体」でできています。そのうち体を充足させるものが何かといったら、まずは「食」。これはいうまでもなく生きるために不可欠な要素で、いわば「体のエネルギー」の源になります。では、心のエネルギーとなるのは何か。体にエネルギーが必要なのと同じように、人間、生きる気力がなくなれば病気にもなります。だから心にもエネルギーが必要なのですが、私はそれこそが「感動」であると考えています。
美しい人というのは、いうなれば感動を与える人。そして感動を与えるものにはいろいろな要素がありますが、人がもっとも深い感動を覚えるのが、実は人に対してなんですね。美しい人は、周りにエネルギーを与え、充足感を与え、幸せにします。美しい人がどんどん増えることには、社会的に大きな意義と価値がある。私がそう考える理由は、そこにあるのです。