心も美しく

日本の美意識のすばらしさ

美の本質は感動

No.6

2023.06.01 UPDATE

本当の美とは何か。 美の本質を伝える人気連載コラム。

美の本質は「感動」である——と言ってきましたが、では、人はこの世に生を受けてから死ぬまでの間に、いったい何に感動するのか。それを考えると、美にもさまざまな種類があることが見えてきます。人間、永遠に死ななければ生きている意味もないわけで、生は死との対比によって輝きますが、まずはストレートに「生きる悦び」に感動、美を求めるという流れがひとつ。たとえばイタリア的な美は、間違いなく生きる悦びから見出されるものです。古くから美術や音楽もそれを表現しているし、建築もそう。人の欲望をぶつけ、ゴージャスに「飾る」と言う方向性にあります。

それに対し日本の美意識の根本は、「枯淡の風雅」というものにある。死を前提とした「もののあはれ」にこそ、美が宿るという考え方です。ヨーロッパでは、花でもバラのように華やかなものが好まれますが、日本では草木や、桜を愛でてきました。桜の散り際にはかなさを覚え、だからこそ満開の美しさが際立つと感じるのは、象徴的と言えますね。あるいは、茶の湯の心。「侘び寂び」というのもいい例です。土そのままの風合いを生かした茶器を見事とし、簡素な茶室は、人が入ったときに美しいバランスを生み出します。活ける花も一輪だけ。はかないものにあはれを感じるから、一期一会という考えも生まれたわけです。

何をもって美しいと感じるかは、文化にも大きく影響します。今になってまた、日本で長い年月をかけて培われた美意識が、西洋のファッションや食に影響を与えていますが、「枯淡の風雅」というものは、実は理解するのがとても難しいんですよ。生きる悦びは、肉体と欲望があれば誰でも感じ取れますが、死を前提に美を見出すことは、単純にはできない。あるがままを大切にし、自然と共生する日本古来のスタイルは、これからますます尊重されていくと思いますが、日本人はそのことを、もっと誇りにすべきだと思います。

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