これから自分をどう表現し、美しくなっていくか——。それを具体的に考えると、たとえばひとつにはファッション、どういう服を選ぶか、ということがあると思います。中には今、これが流行っているからとか、みんながよく着ているからという理由で、服を選ぶ人もいるかもしれません。でも、自分に似合う服を買おうとしたときに、やはり｢自分｣をしっかりともっているかどうかは、非常に重要なところです。ファッションを自己の表現行為として考えたとき、どういう自分になりたいのかということを、どれだけ確立しているかによって、選ぶものも大きく変わるはずだからです。逆にいうと、格好を見ればその人が自分をどう考えているかが、だいたい分かってくるものです。

では、いったい自分はどうありたいのか。それはつまり、どういう人生を生きたいのか、ということでもあります。人生という舞台の主人公である自分のために、どういうシナリオを描くのか。演劇だって映画だって、登場人物がどういう人で、どういう生き方をしてというところを、衣装やヘアメイクで表現しています。同じように人生観や人生の目標を明確にすること、自己の確立なしには、自分をきちんと表現することは難しいと思います。

だいたい目標がはっきりとあって夢に向かっている人は、いきいきとして人生を楽しんでいるように見えるもの。健康的にも見えます。でも、それがなくて個性もない人は、結局輝くこともないでしょうし、美しくもなれないでしょう。だから自分の人生はどういうシナリオに基づいているのかということを、一度きちんと考えてみて、いや、一度ならずいつも考えるようにして、年齢を重ねれば重ねるほど、はっきりとした目的意識をもつことが、美しくなるためにもいちばん重要なことと思うのです。