本当の美とは何か。 美の本質を伝える人気連載コラム。
ファッションとは、実は心理学そのもの。それも深層心理にまで関わってくるものだと思います。人間、表面的な、いうなれば壁をつくっているような状態のときの意識と、もっと深いところの意識、さらには本人も自覚できない潜在的な意識は、すべて違っています。だからファッションも、どのレベルで考えるかによってまったく変わってくるといえます。初めて会う人とお付き合いをするためには、まずはきちんとした服を選んだほうがいいでしょうし、ちょっと親しくなってからのものとは、当然変わってくるはずです。そしてさらにホメオスタシスを高める服となると、これはもう潜在意識レベルの問題。人間の潜在意識にまで耳を傾け、そこにかなうファッションを考えるデザイナーが、もっと出てきてもいいと思うのですが——。そこでやはり、無視できないのが「性差」。過激なファッションが決してなくならないことも、潜在意識のレベルで分析してみると、分かりやすいのではないでしょうか。人間の意識の奥を探り、その先に来るものが「読める」、そしてデザイン性も兼ね備えたデザイナーこそが、本物だといえると思います。
戦後しばらくして、女性がいっせいにミニスカートをはいた時代がありますが、あれは女性が目覚しく解放された時代。そして一度手に入れた自由を、人間手放そうとはしませんから、「大胆」ということにおいて、逆行していくことはまずないのです。ホメオスタシスを高めるためには、常に無難なものは選ばず、そして隠さないこと。冒険心も忘れないこと。みんなと一緒でありたいという人も多いですが、そういう時期を経て自己を確立したら、いかに自分らしさを表現するかも、重要になってきます。時代の流れをきちんと認識しながら、流行に逆らうくらいの気概があってもいいでしょう。「年だから」などという考えは、捨てたほうがいい。60歳になっても70歳になっても、フェミニンなモードが似合う女性——そこには努力が必要ですが——とても素敵だと思いませんか?