本当の美とは何か。 美の本質を伝える人気連載コラム。
心の豊かさを追求することとは、すなわち美を追求すること。だから今、美しい人になることを目指したいと思います。いかに周りを幸せにして、社会に貢献できるか。そして経済的に豊かになること以上に、美しい生活、美しい生き方ができるか。それを追求することが、今まさしく重要な価値の追求といえるのではないでしょうか。
そういう点で、人々がいちばんそれに近い生き方をしていたのが、実は江戸時代の日本。明治に入り、日本にやってきた外国人たちが見た日本は、まるで天国のようだったといいます。大庭園都市で、どこに行っても花が咲き誇り美しい庭がある。そして彼らが何より驚いたのは、見たこともないほどにこやかで、楽しそうな子供たちの顔でした。人々もみんなはつらつとして、笑顔で生きている。そのやさしさや思いやりに触れ、感動した外国人がたくさんいたのです。今の日本人は、かつてそんな歴史的な経験をしたことを誇りにしていいし、私たちの中にそういう遺伝子が受け継がれていることを、思い出したいものです。いかに「自分自身」を美しく、心豊かに生きるか。それを追求することは、もちろん本人の幸せのためにもなるはずです。
さらにその美意識、美の哲学というのは、ひとりひとり違ってよいもの。重要なのは自分の心と向き合うことです。心という自分の本質について深く考えたとき、はじめて本来の自分がみえ、それが自立の第一歩にもなります。それがない人というのは、いつも他人と比較ばかりして自分を見失ってしまう。たとえば雑誌の外国人モデルみたいな女性に憧れて、そんな美しさを目指すことは、もうやめたほうがよいと思います。自分なりの美意識が自然に表れてきたときに、それぞれの美しさが導き出されてくるのだし、それに基づいて服も髪型もメイクも考えればいい。なんでも一律に考える、貧しい美意識の時代はそろそろ終わりにして、いろんな人がいて、そして、それぞれに美しさがあるという価値観をもてば、世の中、楽しくもなると思うのですが。