それは一体どういうことなのだろう。
美しい人はたくさんいるけれど、私がいつも目を奪われ、心奪われるのは、水を感じさせる人……。わかるだろうか? 見るからに、水を感じさせる人。単に肌が潤っているだけではない、その存在に水を感じさせる、そういう人っているものなのだ。
もちろん人は、水で出来ていると言ってもいいくらい、体の約70%は水。それでも、水を感じる人と感じない人がいる。例えば、瞳がキラキラしている人って、なんだかそれだけで水の存在を感じるし、髪にツヤめきがある人も同様。もっと言えば、声が濡れたようにしっとりしている人も、体の中に水が感じられる。そして何よりも、肌の中をさらさらと水が流れているように感じられる人は、文字通りの水を感じる人……。
じつは、目を奪われるだけでなく、なんだかホッとする。水を感じる人に出会うと、まるで潤いで包み込まれるような気持ちになるのだ。何故だかわかるだろうか? 人は、水のそばにないと生きていけないからである。 多くの人は気づいていないはずだけれど、今自分が居る場所のそばに、水がないと、人はなんだか落ち着かなくなるそうである。言うまでもなくそれは、私たち人間、水がないと生きていけないから。それを本能で常に感じているからこそ、水に惹かれる。小川のせせらぎを耳にするとホッとするのもそのせい。もともと、地球上の生命は海から生まれたから、海を見ると深い安らぎを覚えるのもそのせいなのだ。
たとえば、散歩していて、池や小川に不意に出くわすと無性に嬉しくなったりするのも、それがため。まるで砂漠の中でオアシスを見つけたような喜びに満たされるはずなのだ。
だからこそ水を感じる人に、人間は本能的に心惹かれるのである。それは男女の間でも同じ。水を含んだような肌、濡れたような声、キラキラした瞳に、艶めく髪……そういうふうに、体中に水を感じさせる女性は、もう間違いなく愛される。一目惚れされる。
でも理屈抜きに愛される理由はもう一つ、水を感じさせる人は、心までが潤っているイメージがあるからなのだと思う。文字通りカリカリしたり、ピリピリしたり、ネガティブな気持ちを持つことがない。いつもゆったりとした穏やかな微笑みをたたえているのは、言うまでもなく心が潤っている証。そこまでひっくるめて水を感じさせる人こそが、人を包み込み、ホッとさせるのだと思う。
それも、"人は水がないと生きていけないから"ばかりじゃなく、人は生まれる前、母親の胎内で水にそっくり包まれていたから。水に包まれている感覚こそ、人にとって最も深い安らぎとなるのだ。
だから、身も心も潤っている人は、単に愛されるだけではない、一緒に暮らしたいとまで思わせる力を、特別な引力を持っている。潤いは、そういう意味で肌の美しさだけではない、人としての魅力にもつながっていること、知っておいて欲しい。意外だけれど潤いこそが、女性にとって、幸せの鍵だと言うことも。
齋藤薫
Kaoru Saito
女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。新著『大人の女よ!もっと攻めなさい』(集英社インターナショナル)他、『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。