日本文化を普及するために、様々な伝統芸能や伝統品、
また日本文化を継承する方々を紹介してきました。
畑雅彦様
本描きは、昔はほとんど生地でしたが
時代の流れで草稿になってきました
本描きを紙に描く場合と、丸巻(反物)の生地に直接描く場合と、仮絵羽注1した状態で描く場合とパターンは色々あります。昔はね、ほとんど生地でしたね。時代の流れでどんどん草稿注2(紙)になってきましたね。
得意先と何を作ろうかという会話の中で、煮詰めて、まとめて、とりあえず薄い紙で上前注3とか、おくみ注4だけ描きます。「ああしよう」「こうしよう」、微妙に変更があったりすると、変更どおり、本描き用の紙にもう一度、鉛筆で全体像を描いて、また見せて、了承をいただいたら薄紙に描いて、本描き用に鉛筆で描いて、墨を入れて完成です。
私の仕事はね、お客様の要望どおりに描くのが仕事なんで、私の方から「これいいね」という業種じゃないんです。いかに依頼される方が望まれるイメージをできる限り100%、手となり、足となり。それが難しい。
どんなものをその方が考えているか想像して、設計していかなければならない。
アーティストじゃなくって、デザイナー。あくまでも、職人ですからね。
着物ができても、得意先の名前は出ますが、私らの名前は一生出ない。
そういう意味では、お城を作った大工さんみたいなもんですよね。豊臣秀吉の名前は残るけど、お城を作った大工さんの名前は残りませんものね。
代表 冨宅のメッセージ
私も、畑先生に下絵を描いていただいている着物を着させていただいております。長い伝統の中で、はぐくまれてきた着物の伝統技術が、着物を着る方の減少とともに失われていることが大変残念に思います。畑先生にお話をお伺いさせていただき、こうした素晴らしい技術を継承していかなければいけないと改めて思いました。
注1.仮絵羽(かりえば):仮縫いのこと。
注2.草稿(そうこう):着物の下絵を描く紙のこと。
注3.上前(うわまえ):着物の前を合わせたとき、外側になる部分。
注4.おくみ:着物の左右の前身ごろに縫いつけた、襟から裾までの細長い半幅の布。