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長唄 日本・オーストリア国交樹立150周年音楽は国境を越えて

Artist interview

掲載号 冬 2019 音楽

2023.06.01 UPDATE

日本文化を普及するために、様々な伝統芸能や伝統品、
また日本文化を継承する方々を紹介してきました。

長唄・三味線演奏家 今藤いまふじ長十郎ちょうじゅうろう

日本とオーストリア、
二つの国の絆を深める演奏会

――今年は、日本とオーストリアが国交を樹立して150年。この記念すべき節目に、長唄今藤流四世家元、今藤長十郎氏が招かれ、両国の親交を深めるためにウィーン公演が9月に開催されました。家元から三味線を習っている冨宅社長が現地を訪れました。
「この公演の目的は、オーストリアの方々に日本文化を広めることと、現地で活躍されている音楽家のみなさんとコラボレーションをすること。日本の長唄を通して、ふたつの国がお互いをより理解して、友好を深めるための素晴らしいイベントなのです」

――会場は、美しい教会や歴史的な建物が立ち並ぶ、カールブラッツ広場のそば。ウィーンフィルハーモニー管弦楽団の本拠地だそう。
「公演が行われたホールは、「ブラームスザール」です。この名前を聞いてピンとこられた方もいらっしゃると思いますが、あのブラームスが自作曲の初演をたびたび行った会場です! クラシック音楽界の頂点とも言われるこの会場で行うことに深く感動しました。場内にはブラームスの石像が置かれ、キラキラと場内を照らす美しいシャンデリアがいくつもあります。そして、天井を見上げると、美しい装飾が広がっていて…。そんな素晴らしい会場のステージの中央には、日本の金屏風が用意され、舞台には、赤い毛氈の上に座る着物姿の演奏者、和と洋が見事にマッチしているのを肌で感じました」

西洋の音楽と日本の長唄が見事に溶け合い、
最高のハーモニーが!

――会場は大勢の観客で埋まり、いよいよ公演がスタートします。
「1曲目は、明治時代につくられた古典曲"多摩川"です。迫力のある三味線の聞かせどころがたくさんあり、長唄の醍醐味を味わえる名曲です。次に、ウィーンフィルのチェリストとして現地で活躍する、ヘーデンボルグ・直樹氏と三味線のコラボレーション"幻調-月夜-"。この曲は、家元が作曲された曲で、楽譜の違う西洋の音楽と長唄細棹三味線がどんな風にハーモニーを奏でるのかとワクワクして、気持ちが高ぶりました。三味線とチェロ、たったふたつの楽器だけで、まるで魔法のようにひとつになり、美しいメロディが会場を包みます。演奏後に直樹氏にお話しを伺うと、『演奏はお互いが会話をしているようなもの。練習では、三味線に合わせようとしましたが、本番ではお互いの楽器を"生きている音"で対話させて、混ぜ合わせることができました』とおっしゃっていました」

――3曲目は、ウィーン在住のメゾソプラノ歌手、日野妙果氏とのコラボレーション曲です。
「この公演のために作られた新曲"風彩"は、風のように吹き去る一生をやさしい音にのせて、女性の深い悲しみ、喜び、そして思い出を表現しているとても情緒的な曲です。三味線と鳴物の演奏で始まり、静かに歌声が響きます。長唄とはまったく違う発声なのに、まるでひとつの楽器のように染み渡りました」

ブラボー!の声と大きな拍手の
渦に包まれて、幕が閉じる

――休憩をはさみ、いよいよ最後の曲。古典曲"二人椀久"です。
「この楽曲は、私も大好きな曲で、唄も三味線も高度な技術が必要で難しく、演奏がすすむにつれて、演奏者のテクニックが私たち観客をどんどん長唄の世界に引き込みます。特に、三味線の速弾きと鼓の掛け合いには、思わず身を乗り出してしまうほど!そんな大興奮の中で本編のフィナーレを迎えましたが、拍手は鳴りやまず、最後にアンコールでは歌舞伎十八番でもお馴染みの"勧進帳"が演奏されました。演奏後、演奏者たちが横一列にずらりと並び、観客に一礼すると、割れんばかりの大きな拍手が続き、あちらこちらから『ブラボー!』の声が。大盛況のうちに幕は閉じました」

――公演後、家元の感想を伺う冨宅社長
冨宅:公演を終えていかがでしたか?
家元:素晴らしいご縁で公演ができ、無事に終えてとにかくほっとしています。
冨宅:特に心に残ったことは何ですか?
家元:ウィーン公演で得た経験と空気感は私の音楽人生の中で貴重な宝物となりました。ウィーンの人たちの温かさ、熱心さ、そして美意識の高さに感銘を受けました。
冨宅:私も音楽の都・ウィーンで、日本の伝統芸能の長唄が、国境を越えて深く感銘を与えたことをうれしく誇りに思います。お家元、ありがとうございました。

お家元とご一緒に
<small>長唄・三味線演奏家</small> <ruby>今藤<rt>いまふじ</rt>長十郎<rt>ちょうじゅうろう</rt></ruby>

長唄・三味線演奏家 今藤いまふじ長十郎ちょうじゅうろう

長唄三味線演奏家、作曲家。4歳で初舞台。 84年四世今藤長十郎襲名、家元継承。 毎年のリサイタル「三味線の響」公演(92年~)。 今藤同門会。長唄協会演奏会等。 毎年、京都宮川町「京どおり」作曲(84年~)等。 海外公演も多く、昨年は2回目のNYカーネギーホールにて公演。 2017年、歌舞伎座にて三世今藤長十郎追善公演。 文化庁長首表彰(09年) 一般社団法人長唄協会副会長。 大阪芸大客員教授。 国立劇場技能養成所講師。 NHK文化センター講師。 学校法人 東山学園教授。
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